感覚をつないでひらく芸術教育を考える会
第9回 研究発表会



ワークショップの光景



2015年3月7日(土) 兵庫教育大学 神戸ハーバーランドキャンパス 兵教ホール


 第9回 感覚をつないでひらく芸術教育を考える会 研究発表会が,兵庫教育大学 神戸ハーバーランドキャンパスの兵教ホールで開催されました

 「はじめの挨拶」は兵庫教育大学の初田隆先生です。絵画におけるリズムに関して,オイリュトミーやパラレリズムに触れながらのオープニングメッセージでした。


 今回の司会は,光徳幼稚園の椋田敏史園長です。

 木下千代先生より,本日のワークショップの講師である いいむろ なおき氏の紹介がありました。


 今回の研究発表会のワークショップは『身体表現とコミュニケーション』と題して,マイム俳優の いいむらなおき氏によるパントマイムです。


 最初に「パントマイム」と「マイム」の違いを糸口にして,いわゆるパントマイムについて,手振り身振りを交えながら愉くお話をされました。

 「マイム」とは,黙劇・無言劇等,「ことば」のない演劇のことで,「パントマイム」は「マイム」というジャンヌの中のひとつのことで,言葉(台詞)を身振り手振りに置き換えて演じるスタイルのことだそうです。


 その後にマイムの歴史についても,主にフランス・パリの演劇やチャップリンに言及しながら,ザックリととわかりやすく話をされました。

 「クラウン」と「ピエロ」の違いについての話・・・。サーカスにおいて派手な衣装と化粧をして道化を愉しませてくれるのは,正確には「クラウン」であって「ピエロ」ではないとのこと。「ピエロ」は「クラウン」の一種であり,「ピエロ」はイタリア生まれの即興演劇であり17世紀前後にヨーロッパ各地で流行した「コンメディア・デッラルテ」に登場するキャラクターの「プルチネッラ」が「ピエロ」の起源でるといわれていることも,身振りを交えて楽しくお話を続けていただきました。


 いわゆるパントマムに関して由来を糸口にいろいろなマイムに関する楽しい話をされた後に,ワークショップとして参加者と共に身振りの実演です。


 「日常的な動き」に対して,「非日常的な動き」,自然に感じる身振りと,オヤッと思わせる身振り・・・参加者全員が身振り・手振りを体験しました。


 ちょっとした手振りが,豊かな表現や表情を醸し出すことが,体験を通して参加者が実感できるようなワークショップでした。


 「其処に存在しない壁」をあたかも壁があるような身振り・手振り」を通して,「あたかも其処に存在する」ように演じる・・・マイムのテクニックを通してマイムの素晴らしさが伝わってくるようなワークショップでした。


 マイム俳優として「ことば」を用いない卓越したマイミストであると同時に 「ことば」を用いたお話も巧みで,あっという間に予定の時間を大幅に超過していました。でも「時を忘れて」ワークショップを愉しむことができたのは,いいむらなおき氏のキャラクターや人柄や,ひょっとしたらご自身がマイムを愛してやまないことの顕れなのかもしれません。


 ワークショップ後の質問にも身を乗り出して聞いて,ひとつひとつの質問に丁寧に応えておられました。







休憩をはさんで研究発表と実践報告です。今回は2つの研究報告と1つの実践報告です。


 最初は「多感覚間相互作用による観察画の影響について」 岡山大学・清田哲男先生の発表です。



 美術教育における「見ること」(観察)を軸として,視覚情報と他の感覚情報との相互作用に注目して,多感覚の相互作用を促す「見る」指導を通して多様な描画指導を行った研究報告です。

 実際に視覚以外の「嗅覚」と「触覚」の感覚体験をしたグループと感覚体験をしなかったグループの3群間での比較実験実践授業を通した分析結果や,子どもたちの作品やエピソードを交えた発表でした。


 2つ目の研究発表は「『呼吸法を用いた歌唱指導』〜想像することの有効性〜」京都女子大・ガハプカ奈美先生の発表です。


 感覚をつないでひらく芸術教育を考える会においても発表されていた歌唱の基礎である「呼吸法」に関して継続しての研究について,今回は呼吸法を絵で表す「声マップ」を実際に本務校での授業で学生に実践された内容に基づく研究で,呼吸法に関する授業を受ける中で,学生の呼吸に関する意識が学生の描画を通して変遷する様子を交えた内容でした。


 実践報告として「視覚障碍者のための美術鑑賞プログラムー彫刻を音でみるー」 甲南女子大学・前田豊稔先生です。


 視覚障碍を持っておられる方々の「美」を愉しむ機会,視覚障碍を持っておられる方々が愉しめる美術作品に関して問題意識を持っておられて,実際にJBS日本福祉放送のラジオ番組として企画した番組での西宮大谷記念武術館での「彫刻を音でみる」という美術鑑賞プログラムの実践報告です。

 ラジオ番組とDVDの映像を通しての実践の様子と,視覚障碍を持っておられる方々の感想の紹介を交えた報告でした。


 研究発表会の最後は,兵庫教育大学大学院の授業「総合芸術表現演習」を受講した学生による作品・パフォーマンスです。

 最初のパフォーマンスは≪刻ーキザムー≫


 ブラックライトライトやカラー照明を用いたパフォーマンスでした。


 2つ目のパフォーマンスは≪梅月夜≫


 障子,墨,スプレーを用いたパフォーマンスでした。


 ・・・パフォーマンスが終わって片付けシーン


最後のパフォーマンスは≪アオの軌跡≫,このような舞台でのパフォーマンスです。


 ブラックライトに浮かび上がる蒼いオブジェクト


 音楽とタップダンス



 講評は奥忍先生です。研究発表・実践報告,パフォーマンス,そしてワークショップのそれぞれについて,端的で的確な評され,素敵な感想をコメントされておられました。




全プログラムが終了して,事務局の井上朋子先生よりの事務連絡


 木下千代先生より最後の挨拶がありました。





 会場の兵教ホールの後片付けが終わって,親睦会がJR神戸駅前ビル6階の居酒屋「竹取御殿」で10名が,第9回の研究発表会が盛大に開催されたことの打ち上げと共に,親睦を深めました。